外壁の汚れや色あせが気になり始めたとき「自分で塗れないだろうか」と考える方は少なくありません。しかし、家全体を守る外壁塗装には、想像以上の労力と専門的な知識が必要です。安易に取り組むと、失敗して余計な出費を招くだけでなく、取り返しのつかない事故につながる恐れさえあります。そこで本記事では、外壁塗装を自分でする場合のメリットとデメリット、そしてプロに任せるべき理由について詳しく解説します。
外壁塗装は自分でできるが注意点を理解しておこう
外壁塗装を自分ですることは可能ですが、施工する範囲やリスクを正しく理解しておく必要があります。日曜大工の延長で取り組める部分と、プロに任せるべき領域を明確に区別することが、成功への第一歩です。安全に手が届く範囲であれば、DIYでの塗装は十分に可能です。自分で手入れをすることで費用を抑えられるだけでなく、楽しみながら作業を進められるでしょう。しかし、2階建て以上の住宅全体を塗るとなると話は変わります。なぜなら高所作業に伴う転落の危険性や、足場の設置といった専門的な準備が不可欠になるからです。
また、塗装の品質が建物の寿命に直結するという点も考慮すべき点です。プロは高圧洗浄や下地処理に多くの時間を費やしますが、素人の場合、どうしても塗る作業ばかりに意識が向きがちです。
下地処理が不十分だと、せっかく高い塗料を使っても数ヶ月で剥がれてしまうケースがあります。したがって、自分の技量と安全確保が可能かどうかを慎重に見極め、無理のない範囲で計画を立てるようにしてください。
定期的な外壁塗装が必要な理由
そもそも、なぜ外壁塗装は定期的に実施しなければならないのでしょうか。ここでは、塗装が必要な3つの主な理由について解説します。建物の寿命(耐久性)を延ばすため
外壁塗装をする最大の目的は、建物の寿命そのものを延ばすことにあります。塗装によって作られる「塗膜」は、外部刺激から建物の構造体を守る鎧のような役割を果たしています。サイディングやモルタルが水分を含んで脆くなると、そこから腐食が始まり、柱や土台といった家の骨組みにまで影響が及びかねません。定期的に塗り替えを実施し、強力な塗膜で家をコーティングし直すことで、建物の耐久性を維持し、長く安心して住み続けられる状態を保てます。
雨漏りを未然に防ぐため
外壁塗装には、雨水の侵入を防ぐ防水工事としての側面もあります。経年劣化によって外壁に発生したひび割れや、サイディングの継ぎ目を埋めるコーキングの隙間は、雨漏りの原因になる可能性があります。雨漏りというと屋根から発生するイメージが強いですが、実は外壁からの浸水も決して珍しくありません。
塗装工事では、単に色を塗るだけでなく、こうしたひび割れや隙間を丁寧に補修する下地処理が含まれます。塗膜によって表面を防水し、隙間を埋めることで、建物内部への水の侵入をシャットアウト可能です。室内に雨染みができる前に外側から対策を講じることが、家を守るための最善策といえるでしょう。
将来的なトータルコストを節約するため
定期的なメンテナンスには費用がかかりますが、長期的な視点で見るとトータルコストの節約につながります。「まだ大丈夫だろう」と塗装を先延ばしにし続けると、外壁材の劣化が進行し、塗装だけでは修復できない状態になりかねません。適切なタイミングで塗装を実施することは、将来発生しうる高額な修繕費を回避するための、賢い投資といえるでしょう。
外壁塗装を自分でするメリット
リスクがあるとはいえ、DIYで外壁塗装に取り組むことには確かなメリットも存在します。ここでは、DIYを選択した場合に得られる3つのメリットを紹介します。費用を大幅に節約できる
自分で塗装をする最大のメリットは、工事にかかる費用を大幅に抑えられる点です。一般的な塗装業者に依頼した場合、見積もり総額の約4割から5割は、職人の人件費や現場管理費などの「技術料」が占めています。DIYであれば、必要な出費は材料費と道具代のみで済みます。足場を設置せずに脚立などで作業できる範囲であれば、業者に依頼する場合と比較して半額以下、場合によっては数分の一のコストで仕上げられるでしょう。
浮いた予算でグレードの高い塗料を選んだり、他のリフォームに回したりできるため、経済的なメリットを最優先する方にとっては大きな魅力となるはずです。
自分のペースと好みで作業できる
業者に依頼する場合、事前の現地調査や見積もり、色決め、そして工事期間中のスケジュール調整など、多くのやり取りが発生します。一方、DIYであれば他人に気を使うことなく、自分のペースで作業を進められます。天気の良い週末だけ作業をする、平日の空いた時間を活用するなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な計画が可能です。
また、仕上がりの色や質感にこだわりたい場合も、誰かに遠慮することなく、納得いくまで試行錯誤できます。壁の一部分だけアクセントカラーを入れるといった遊び心のあるデザインも、自分の手なら自由に実現できるでしょう。
自宅への愛着が深まる
自分の手で時間をかけて家を手入れすることで、マイホームへの愛着がより一層深まるという精神的なメリットもあります。普段は何気なく見過ごしていた外壁の汚れを落とし、ひび割れを埋め、丁寧に色を塗っていく過程で、家の状態を細部まで把握できるでしょう。「ここは日が当たりやすいから劣化が早いな」「ここの窓枠は汚れが溜まりやすいな」といった気づきは、今後のメンテナンスにおいても役立つはずです。
苦労して仕上げた外壁が美しく生まれ変わったときの達成感は格別であり、家族とともに時を刻むパートナーとしての愛着を感じられるようになるでしょう。
外壁塗装を自分でするデメリット
メリットがある一方で、DIYにはプロに依頼する場合にはない深刻なリスクが潜んでいます。安易に始めると、怪我や失敗によって後悔することになりかねません。ここでは、事前に知っておくべき3つのデメリットについて解説します。転落事故による大怪我・死亡リスク
最も懸念すべきデメリットは、高所作業に伴う転落事故のリスクです。一般的な2階建て住宅の場合、2階の軒先は約6メートル、屋根の上となれば7メートル以上の高さになります。足場なしで梯子や脚立を使って作業をするのは、プロの職人であっても足がすくむほど危険な行為です。不安定な足場で塗料缶とローラーを持ち、両手を使って作業をする状況は、バランスを崩しやすく極めて危険です。
万が一転落すれば、骨折などの大怪我はもちろん、打ちどころが悪ければ命にかかわることもあるでしょう。安全は何物にも代えがたい優先事項であることを忘れてはいけません。
品質低下と施工不良のリスク
塗装工事の品質は、仕上げの上塗りではなく、その前段階である「高圧洗浄」と「下地処理」で9割が決まるといわれています。プロはこの工程に徹底的にこだわりますが、知識のない素人が実施すると不十分になりがちです。汚れや古い塗膜が残ったまま新しいペンキを塗ってしまうと、塗料が外壁に密着せず、わずか数ヶ月で剥がれてくる「施工不良」を引き起こします。
また、塗料の希釈率や乾燥時間を守らないと、色ムラが発生したり、期待した耐久性が発揮されなかったりします。
最悪の場合、失敗した塗装をすべて剥がしてからプロにやり直しを依頼することになり、最初から頼むよりも高額な費用がかかってしまう「安物買いの銭失い」になるリスクがあるのです。
膨大な時間と労力がかかる
プロの職人が2人から3人でチームを組み、朝から夕方まで作業をしてようやく2週間程度で終わるのが、一般的な外壁塗装の工期です。これを一人、かつ週末だけの作業で進めようとすると、完了までに数ヶ月かかることも珍しくありません。その間、窓やエアコンの室外機は養生シートで覆われたままになり、換気ができず部屋が暗い状態が続きます。日常生活に大きなストレスがかかるだけでなく、天候に左右されて作業が進まない焦りも生じるでしょう。
貴重な休日を何ヶ月も塗装作業に費やす労力は計り知れません。「こんなに大変なら頼めばよかった」と途中で挫折してしまうケースも多いため、時間のコストも考慮した上で判断する必要があります。